【よんだ本】2013年前半の読んでよかった本

 最近TwitterFacebookで読書感想文を垂れ流しているせいか「最近読んだ本でいいのあったら教えて」と言われることが多いので、2013年上半期に読んだ本の中で良かったものをまとめてみる。といってももう9月なんだけど。
※感想コメントの一部は読書メーターと被っていますがご了承ください。

【エッセイ・ノンフィクション】

「ミラノの太陽、シチリアの月」 内田洋子/小学館

 イタリアの情景、息づく人々の生活、食べ物、人生。淡々と描かれるそれらはまるで小説のようだけど、ノンフィクションだという著者の言葉を信じることにする。切り取り方、見せ方が抜群に上手いのだろう。そして村上春樹の「回転木馬のデッドヒート」を思い出さずにはいられない。
 テンポのよさで一気に読者を引き込む文章も気持ちがいいんだけど、私はこの本のように静けさをベースにした文章が好きだ。小川洋子とか。理由を色々考えてみた結果、物事を誇張することなく「あるがままの大きさ」で切り取り、表現しようとしている様に誠実さを感じられるからなのだろう、という結論に至っている。


嘘つきアーニャの真っ赤な真実」 米原万里/角川文庫

 親の仕事の都合で9歳から14歳までをプラハのソビエト学校で過ごした著者が、特に仲の良かったギリシャ人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤスミンカの行方を辿り再会するまでのドキュメンタリー。親が共産主義者という共通点を持つ彼女達がソ連崩壊という激動の時代に翻弄された様を描くと共に、当時彼女達が推し量ることのできなかった歴史的背景にも考察を加えた奥深い作品になっている。著者が置かれた環境は一般的な日本人に比べてかなり特殊なものだったけど、どのような環境でも子供達は時代の空気を吸い取り血肉にしながら育っていくものだろう。万感の思いが胸に迫る1冊だった。
 そして著者の早い死を心から惜しむ。

 Amazonで高評価を受けているのも納得。私はちょうどKindleのセール対象になってたので200円ぐらいで買ったんだけど、2000円だったとしても満足できる内容。自信を持ってオススメします。


「謎の独立国家ソマリランド」 高野秀行本の雑誌

 「海賊」「リアル北斗の拳」というイメージで知られるソマリアと、その中で10年以上平和を保っているソマリランドという「国家」の取材記。報道で知る限りの情報から無法地帯とばかり思っていたけど、ことソマリランドに関しては日本より合理的な民主主義のシステムを持ってるんじゃないかと少し考え込んでしまった。複雑な氏族社会を説明するために戦国武将の名前を使ってくれて助かったけど、今の内戦状態はまさに戦国時代のようなものなのかもしれない。筆者にはこれからも未知の世界を旅し、無事に帰国して取材記を書いてほしい。

 私がこの人の家族だったら心配すぎてとても生きていけないんだろうけど、いろんな場所に潜入していろんなことを著作を通じて教えてくれるので、無責任ながらありがたい存在。


【フィクション】

「夜は短し歩けよ乙女」 森見 登美彦/角川文庫

 読み進むうちに
 「京都行きたい!」
 「違うパターンで学生やってみたい!」
   (※私の4年間はほぼ部活漬けだったので。これはこれで楽しかったんだけど)

 「よくわからないけど全体的に羨ましい!」
 という気分になってきてしまう小説。登場人物全てが個性と魅力に溢れ、小説世界そのものに愛おしさを感じてしまう。


「楽園のカンヴァス」 原田マハ

 ミステリーと時間軸がともに複数の層を持つ、とても濃密な物語。でもなによりも絵画への愛情が熱い。次々と現れる謎の欠片を楽しみつつ「ルソーのことに集中したいのにー」とジリジリするという、何とも贅沢な読書タイムを過ごせた。大原美術館MoMAにぜひとも行ってみたくなった。


 以上です。

 思ったよりフィクションが少ないんだけど、そういえば今年前半はあまり本を読んでなかったんだった。7月以降は積極的に小説読んでるつもりなので、その話はいずれ年末にでも。